(1)販売と営業は似て非なるもの
販売と営業というのは何が違うと思いますか? ほとんど同じことだと思いますか?
当社の定義では、まったく違うものです。「販売」というのは、例えばチラシを配布して、それを見た方が店頭に来て買うということです。つまり、「買う意思がある方」に買ってもらうことです。
営業は、こちらから買ってくれそうな方に提案してさまざまなセールストークを駆使して、場合によってはノベルティグッズ等を渡して買ってもらうことです。つまり、「買う意思がない方」に買ってもらうことです。
(2) 販売と営業の難易度
販売より営業のほうがはるかに難易度が高いです。3回提案して断られたときが営業のスタートという人もいるぐらい、営業はしつこく提案するのが一般的です。もちろん、「買う意思がある方」が全員買うわけではありませんが、「買う意思がない方」に提案するより高確率で成約します。
当社は、販売をしていて営業はしていません。「助成金はいらない」と言われたら、これ以上その会社には助成金の提案をしないで別のサービスの提案をします。
1つ言えるのは、販売のほうが「営業」より楽(ラク)です。筆者はいつもどうやったら楽にできるか考えています。
(3) お願いは禁句
営業より販売のほうが楽ですが、販売でもやってはいけないことがあります。それは「お願い」です。
例えば、「どうかご購入をお願いします」というようなことは良くありません。お願いする場合「少し割引して」と顧客から言われたときに拒否しにくくなるからです。
(4) 料金表による定価販売
当社は、お願いはしないので「定価販売」ができます。助成金の代行報酬や顧問料などすべてのサービスは「料金表」で価格設定をしています。それについて、いかなる理由があっても価格を下げることはしません。常に「定価販売」を通しています。
したがって、当社では誰に聞いてもすぐに価格を回答できますし、同じ金額です。「定価販売」なので利益ががっちり出ます。価格交渉は「時間の無駄」と「利益が減る」のでやりません。
<事例>
例えば、冷蔵庫やテレビを家電量販店に買いに行ったときに店員が寄ってこなかったら値引きしにくいと思いませんか?
店員が寄ってこないからといってレジにいって値引き交渉はしません。レジで冷蔵庫の値引き交渉をしたら、レジに列ができて苦情になります。
つまり、こちらから「買ってください」というようなお願いをしなければ値引き交渉は起こりません。
(5) 仕事を顧客から依頼されるスタイル
当社は、助成金の提案をした会社から「助成金の申請代行をお願いします」と仕事を依頼されるスタイルにしています。このスタイルを貫くことが安易な値下げをせず「定価販売」につながり、利益を増すポイントになります。
(6) 顧客に選ばせる「松竹梅理論」
サービスを売るときに1つのコースしかないと売りにくいものて
す。
よくある事例として、うなぎ屋さんが、2,000円の蒲焼を売りたいときは、1,500円と 2,500円の蒲焼を追加して3つ並べます。すると、だいたいは真ん中の2,000円の蒲焼を買います。これを「松竹梅理論」といいます。
社労士の事例に置き換えると、「就業規則作成は20万円です」というより15万円と25万円のコースを作って選んでもらいます。すると、20万円の就業規則作成のコースを買います。
ちなみに、当社は就業規則作成については、20万円、30万円、50 万円のコースを設定しています。販売実績は、70%の顧客が30万円のコースを選び、残り 25%が 20 万円、5%が 50 万円のコースを選びます。
ときどき、「20 万円と 30 万円のどちらがいいですか?」と聞いてくる顧客がいるので、そのときは「実は30万円のコースが一番の売れ筋で、70%のお客さんはこちらを選びます」というと、ほぼ100%、30 万円のコースを選びます。
選択肢を与えて顧客に選んでもらうということを続けていくと、いつのまにかこちらの思うように相手を動かすことができるようになってきます。つまり、顧問契約でも就業規則作成でも選択するコースが3通りぐらいあるほうが顧客は加入しやすくなります。選択肢が1つだとうまくいきません。
また、1つのサービスをごり押しするより、選択肢の中から顧客が自分で選んだほうが後から苦情になりにくいという効果もあります。
(7) 必殺のクロージング「沈黙話法」
こちらからの提案が終わり、最後のクロージングで失敗しないために「沈黙話法」というのがあります。
それはまず、ひととおり商品の説明をして質問がないか確認したら、あとは相手の判断を待ちます。「どうしますか?」と回答を催促するようなことはしてはいけません。
それではどうするかというと、沈黙します。じっと黙って相手の回答を待ちます。これが「沈黙話法」です。90%以上の確率で成約できます。
ここで失敗するのが、営業に向いていそうな方です。いろいろ話して押しまくります。押されると人は反発しお断りをします。しかし、「沈黙話法」だと押されないので、そのままクロージングが成功となります。ぜひ、やってみてください。
(8) 助成金契約から顧問契約へ
当社では、顧問契約の新規件数が今年は新記録になるかというぐらい話がきています。いきなり顧問契約を紹介してもらうケースもありますが、いままで助成金のスポット契約をしてきた会社からの引き合いが多いです。
助成金のスポット契約者に対して事業主に未払い残業があったら助成金を申請できないというアドバイスが今になって効いてきた印象です。
違法行為をしてきた社会保険労務士はこれから助成金を申請できないし、顧問契約にも結びついていないのではないでしょうか? 当社は助成金を申請できますし、顧問契約も増えているという状況です.
(9)切り口は助成金1つに
新規顧客獲得の切り口は、助成金 1つに絞ると入り込みやすいです。複数のサービスができるからといって、顧問契約や就業規則などを羅列しても良くありません。
助成金を切り口として入り込み、相手が耳を傾けたらいろいろな提案をします。ここが重要なところです。したがって、入り込んでから提案できるサービスは多いほうがよいです。顧問契約だけでは厳しいです。
社労士の場合、社員の入社・退社等の手続業務だけしか提供できるサービスがないと顧客をなかなか増やせません。
また、手続きの電子申請化が 100%になる日が近いにもかかわらず、開業社労士の70%は電子申請での手続きもできません。つまり、電子申請ができない社労士は「消えていくのを待つだけの社労士」ですから顧客を増やすどころではありません。
生き残って、顧客を増やすには、どうすればよいと思いますか?提供できるサービスが顧問契約だけでは、新規顧客を獲得するのは難しいです。顧問契約を提案された事業主は、「はい」か「いいえ」の2択になります。ちょうど顧問社労士を探している事業主であれば「はい」というかもしれませんが、いきなり顧問契約の提案はハードルが高すぎます。スポットで提供できるサービスを増やしましょう。
依頼しやすい料金でニーズがあるサービスを単発で数万円~数十万円ぐらいの料金で提案できるとよいです。事業主は毎月支払う費用は嫌いますが、スポットでいいなと思えるサービスなら数十万円のサービスでも買います。
ただ、すぐに提供できるサービスが見つからない方もいます。その場合、事業主の高い関心度があり、ある程度の報酬を見込めるサービスとして「助成金ビジネス」を提供サービスに加えてみてはどうでしょうか?
「助成金ビジネス」は、資金繰りに悩む事業主に響く最適なスポット商品になりますので、顧客を増やす有効な手段です。もし手続きや給与計算以外に「助成金ビジネス」ができたら未取引先の事業主との接点を持つことが容易になります。
つまり、見込み客を増やすことが簡単にできるようになるということです。「助成金ビジネス」を提供サービスに加えて新規顧客を増やすことは同時に、顧問契約の見込み客を増やしていくことになります。
助成金を通じて人間関係を構築して最終的な目標、顧問契約の提案をしていきます。今は働き方改革の話をしながらいろいろ提案ができますから、「助成金ビジネス」を切り口に顧問契約を増やすのは、社労士なら簡単です。
