(1) 審査項目の確認と理解
① 補助対象事業の適格性
ものづくり補助金では審査項目が公募要領に具体的に書かれているので、事業計画書作成にあたって必ずよく読み、理解しておく。
審査項目として公募要領に書かれているのは、「補助対象事業としての適格性」、「技術面」、 「事業化面」、「政策面」、「加点項目」の大きく5項目である。
このうち、適格性については、公募要領で別途「補助対象事業コンセプトの要件」として示されている。要件を満たしていない場合には、それだけで不採択となるので注意を要する (第2章参照)。
② 審査上の加点項目
また、審査における加点項目として、経営革新計画などの法律認定の取得や一定以上の賃上げに取り組む企業などが定められている(第2章参照)。これらの形式要件を満たせば審査において点数が加算される。加点項目は公募ごとに変更になることが多いので、 最新の公募要領で確認する。
このうち定められた種類の法律認定計画は、認定取得には時間と労量がかかり、公募要領で定められた有効な期間の認定であるなどの制限もある。だが、認定計画の内容は、ものづくり補助金の補助対象事業と重なる部分も多い。計画要件の充足で確実に加点されるので、できる限り加点対象の法律認定計画を申請して取得したい。
③ 事業計画書の定性的審査項目
適格性と加点項目を別とすると、事業計画書の内容に対する定性的評価による審査項目は、技術面、 事業化面、政策面の大きく3項目である。
特に重要な技術面と事業化面の審査項目に共通するポイントは下記の通り、実現性、革新性、収益性などである。対象事業がこれらのポイントを満たしていることを事業計画書の中で具体的に説明した
事業計画書に審査項目に関することが全く書いていないと、その分の評価点が入らない。書類審査では書いていないことは全く評価されないので、とにかく、審査項目にもとづいて漏れの無いように記載する。
なお、数値目標として「3〜5年計画で「付加価値額」年率3%以上増加」や「給与支給総額を年率平均1.5%以上増加」 などの、 定量的目標標がある。少事業の事業化による効果を数値計画として記載する際に、 この要件を満たせる数字とその根拠も示す必要がある。
(2) 実現性評価の視点
新しい製品·サービスの開発などの補助対象事業が、実際に実現できないと採択しても補助金自体が無駄になってしまう。そこで、事業化まで含めて対象事業が確実に実現できるかどうか実現性が第一に重要な審査ポイントであ
実現性が具体的にどのような観点から評価されるかというと、例えば以下のような諸点である。技術面の課題が明確で、計画の実施能力も認められ、実施体制やスケジュールが具体的に計画されているかどうかが評価される。
【実現性評価の観点】
① 経営者の経験や既存事業実績から技術面での実施能力があるか
② 製品· サービス開発に向けた技術面の課題が明確になっているか
③ 既存事業の実績や保有技術が活かされる事業か
④ 社内での実施体制が具体的に計画されているか
⑤ 事業化へ向けたスケジュールが示されているか
⑥ 事業化後の販売経路や営業方法が計画されているか
⑦仕入先、 提携先などの事業パートナーや協力者が計画されているか
(3) 革新性評価の視点
一般に補助金の対象としてふさわしい事業は、既存のありきたりの事数っ
はなく、これまでにない新しい要素が認められることが大前提である。ものづくり補助金の対象としても、そのような新規性、革新性のある事業が評価される。
したがって、審査上も対象事業で開発を行う製品,サービス、生産・提供プロセス改善の革新性も重要な審査ポイントだ。
革新性とは、単に新しいだけではなく、既存の製品サービスと差別化され、機能、 性能、価格などで優位性が認められるということである。
単なる既存設備の更新や既存事業の延長ではなく、従来の技術や方式、しくみと異なる優れた考え方の製品やサービスなど革新性が高い事業を生み出す設備投資ほど補助金対象とする意義があり、審査でも高く評価される。
【革新性評価の視点】
① 同じような製品 サービスが他でも一般的に行われていないか
② 類似する他社の事業、製品·サービスとの違いが明確になっているか
③ 従来技術、 製品、事業で解決できなかった課題を解決できるものか
④ どのような点で既存の技術、製品·サービスと異なる優位性があるか
⑤ 事業化の実現でどのような新しい価値が提供される事業か
(4) 収益性評価の視点
製品·サービスの開発に成功し、事業化が実現できたとしても、十分な市場の需要や顧客のニーズが見込め、収益を確保し黒字化できなければ、事業
は継続できない。本来の目的である最終的な事業化の成功が求められる。
製品·サービスの発売や提供開始ができて、その事業が継続できなくなれば、補助金の意義が薄れてしまうので、審査上でも収益性が評価項目になっている。
【収益性評価の観点】
①会社全体の売上高や経常利益率の向上が十分可能か
②事業化が実現すると新たな需要や顧客が十分見込まれるか
③顧客ターゲットが具体的に明確になっているか
④市場ニーズが十分期待できる製品 サービスか
⑤当初は赤字でも、 その後採算が採れる事業へ発展できそうか
⑥販売経路や営業方法が具体的に計画されているか
(5) 政策面評価の視点
ものづくり補助金の目的は中小企業者の支援であり、国の政策の一環である。したがって、単にそれぞれの事業者の支援に留まらず、 さらに広い政策効果を期待するものだ。 その観点から政策面の評価も審査項目に加えられている。
具体的には審査項目の政策面に記載されている、地域経済への貢献、環境へ配慮した持続可能性などが期待できる事業が評価される。
【政策面評価の視点】
① ものづくり補助金の目的に十分沿った他の企業のモデルになる取組みか
② 国の方針と整合性のある賃金上昇に資する取組みか
③ 地域経済と雇用の支援に繋がることが期待できる計画か
④ ニッチ分野で差別化を行い、 グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性
があるか
⑤ 環境に配慮した持続可能な計画か