(1) 支援先選定の基本的考え方
補助金の申請書類作成にはかなりの労力がかかる。特に内容審査の中心である事業計画書の作成はスムーズにできた場合でも2~3週間はかかるだろう。
しかしながら、 採択率は約 40%と申請しても採択される確率は高いとはいえない。
つまり、支援者にとってもものづくり補助金の支援はリスクのある業務といえる。そこで、支援依頼を受けたとしても、経営者の本気度、事業計面具体化の程度など採択可否の可能性をある程度見極めたうえで、引き受けを決めることが必要である。
また、 支援者側から関与先や取引先に応募申請を勧めるケースも同様である。ものづくり補助金に適した事業者に声掛けをすべきである。
支援者側としても経営者への共感をもとづいて支援することで、 信頼関係の構築にも繋がり、採択の可能性も高まるといえる。
(2) ものづくり補助金向きの経営者
ものづくり補助金は経済産業省 (中小企業庁)所管の事業系補助金の中でも対象は幅広い。とはいえ、どのような経営者でも向いているとはいえない。
新しい事業にもチャレンジするバイタリティや、社外の専門家も含めて他人の意見も聞く柔軟性のある前向きな経営者に向いている。支援者側からアプローチする場合もそのような経営者をターゲットとした方が支援しやすく、採択可能性も高くなるだろう。
他力本願で申請を丸投げしたり、事業の成功自体よりも補助金だけを目当てにする経営者ではうまくいかないケースが多い。
【ものづくり補助金向きの経営者】
① チャレンジ精神が旺盛でバイタリティがある
② 従来から事業拡大や収益向上に前向きに取り組んでいる
③ 補助金ありきではなく、 新しい事業への事業意欲がある
④ 顧客への価値提供を重視し、社会貢献の意識をもっている
(3)ものづくり補助金向きの企業・対象事業
決められた要件をみたした事業者の行う対象事業でないと、 補助金申請はできない。ものづくり補助金の要件にマッチした事業でかつ審査において評価を得られる可能性のある事業であることが前提になる。
具体的な対象事業は公募要領で詳細が定められている。新たな事業にチャレンジする企業を公的資金で応援するという補助金の狙いからすると、独自性や新規性のある事業を行う企業が補助金向きであり、ものづくり補助金にも採択もされやすい。
誰に既存事業に用いている機構城装置の更新などではなく、新しい製品・サービスや生産プロセス改善のための新規事業であることが前提として必要である。
また、ものづくり補助金の場合は、現在は商業・サービス業も含むすべての業種が対象だが、 名称の通りもともとは製造業向けの補助金である。補助対象経費についても、 機械装置 システム構築費をはじめとした設備投資関連の費用が中心である。したがって、どちらかといえば製造業向きであるといえる。
さらに、ものづくり補助金は個人事業者や新規創業者も対象とはいえ、 ややハードルが高く、やはり一定の経営基盤をもつ企業に向いている。
新規事業である補助対象事業の実現にとっては、既存事業が安定した企業の方が有利である。申請書類作成や煩雑な書類整備などの事務処理能力や、補助金交付までの支払資金なども最低限必要である。
【ものづくり補助金向きの事業および企業】
①既存事業とは技術や方式で一線を画す新規事業
②今までにない新しい視点に基づいた革新的事業
③市場や顧客の潜在的ニーズを掘り起す新しい事業
④事業化による継続性、 収益性が見込める事業
⑤事業化を通じて何らかの社会的課題、 地域課題を解決する事業
⑥自社の技術力や事業経験などからして実現可能性のある事業
⑦一定の経営基盤が確立し、資金調達力のある企業
⑧既存事業の安定した営業基盤、 顧客をもつ企業