(1)経営者自身について
経管者自身の経歴や事業に対する想いは、補助金の申請にあたって意外と重要だ。新しい事業への意気込みやそれまでの経験が事業の成否に影響するので、審査ではその点にも注目する。
なぜこの対象事業にチャレンジするのか、どうして実現できるのかは経営者の想いの強さや力量にかかっているともいえるからである。ヒアリングを通じてその点を理解し、事業計画書へ反映させる。経営者の強い想いを示すことで、事業計画書を読む審査員の共感も得られる。
【経営者・対象事業に対する質問例】
①この事業の実現のための最大の課題は何ですか?
②この事業を通じて何を成し遂げたいですか?
③この事業は何のために(どんな目的で)行うものですか?
④この事業をやろうと思いついたきっかけは何ですか?
⑤この事業は貴社にとってどのような位置づけですか?
⑥この事業はどのような点で既存事業と違いますか?
⑦この事業は既存の製品・サービスとどのように差別化できますか?
⑧この事業は願客にどのような価値を提供するものですか?
⑨この事業をもっとも必要としているのはどんな願客ですか?
⑩この事業の最大の顧客ターゲットはどこに定めますか?
⑪この事業の類似・競合する製品・サービスは何ですか?
⑫この事業に活かせる既存事業の経験や技術は何ですか?
⑬この事業を実現するための体制はどのように構築しますか?
⑭この事業を実現する上でのリスクは何ですか?
⑮この事によって社会や地域に献できることは何ですか?
(2)対象事業について
対象事についてのヒアリングは、そう簡単ではない。対象の範囲が広いうえ、経営者がどの程度具体的に考えているかによっては、すぐに答えが返ってこないことも多い。
そこで、ヒアリングにあたっては、あらかじめ質問項目を明確にして渡しておいたり、事前に資料を依頼しておいたりするなどの工夫が必要だ。
また、ヒアリングを通じて、経営者の考えを引き出したり、整理したりしながら一緒に考えていく姿勢が求められる。
(3)資料依頼の必要性
事業計画書の作成にあたって、全てヒアリングをもとにして行うのは時間がかかりすぎる。そこで、経営者自身が資料やメモとして用意できるものはなるべくヒアリングの前に提出してもらうようにする。
あらかじめ用意した必要資料リストを事業者に渡す。その際に、記入しやすいような事業計画書の項目を記入した書式や一問一答形式の質問票なども用意して、箇条書きで記入してもらっておくと良い。
【資料依頼の際に用意しておく書類の例】
①必要資料リスト(会社概要、決算資料、補助対象事業の資料など)
②事業計画書記入様式(目次、項目案含む)
③経営者、事業についての質問票
(4)計数関係資料の依頼
損益計画を作成するのに、その前提となる数字についてもなるべく資料として用意してもらい、それをもとにヒアリングを行う。
その際、補助対象事業にかかる費用は既存事業とは区別しておく必要がある。経営者が事前に十分用意できない場合は、数字の部分についてもヒアリングの中で確認することになる。
補助対象経費として計上する機械装置など設備投資関連の購入明細は、事業計面書のうちの「経費明細表」に記載するため、見積書の確認が必要だ。
今後、事業期間中から事業化以後も含めて数年間の損益計画を作成するために必要な以下のような計数関係資料を入手する。
【依頼する計数関係資料の例】
①決算書および最近月の試算表、月次損益推移表
②対象事業の事業期間内の費用(設備投資額、その他費用明細)
③対象事業の事業化後の費用(原価、人件費、減価償却費他)
④対象事業の製品・サービスの価格・料金単価(案)
⑤対象事業の製品・サービスの売上計画(月間数量、顧客数など)
(5)その他の資料
①技術・機能・性能に関する資料
製品・サービスに用いる技術に関する性能試験データ、実験結果、特許明細などの技術的背景を客観的に示すデータや資料(図表や写真、イラストなども含も)があれば、事業計画書の材料として依頼する。
②願略ターゲット・候補リスト
対象事業の製品・サービスについて既に願客から引合いがある場合やこれからアプローチナる場合にも、候補先としての願客がリストアップされていれば、受注・販売面で事業計画書の実現性評価のうえで有利である。
あるいは既存事菜の顧客がターゲットになる場合は、顧客名簿が何名分あるのかだけでも良い。
③価格・料金表等
事業化後における対象事業の製品価格やサービス料金の計画表を作成してもらう。この時点では仮の数字でも構わない。損益計画を作成する際にはその根拠として必要になる。
④必要経費一覽
対象事業にかかる費用をリストアップする。この段階では、補助金の対象となるかどうか区別せずに漏れなく計上する。例えば、事業化後の外注費や材料費なども、どのくらいかかりそうか必要に応じて調べてもらう。
これらの計数は補助対象事業の損益計画、資金計画といった事業計画書のうちの数値計画の作成にも必要だ。
最終的には初期投資とランニングコストに分け、そのうち補助対象経費とそれ以外を分けておくことがポイントだ。